文化的な秋の一日を堪能!! SF小説の文学的価値を再認識させられる【世田谷文学館】〝小松左京展―D計画―〟

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文化、芸術、読書の秋。
ということで、行ってきました【世田谷文学館】。

〝小松左京展―D計画―〟です。

「D計画」とは、『日本沈没』の作中で遂行されるプロジェクト名。 「D」はディザスター(disaster)=災害を意味する。人類と宇宙の関係性を追求し、自然災害や人類が引き起こす戦争など大いなる災いへの危 惧を訴え続けた小松左京の〈文学〉こそ〈D計画〉そのものであった。(展覧会フライヤーから引用)


小松左京は、言わずと知れた日本SF界の巨匠。
ボクも若い頃にずい分とハマりました。

1Fで買ったチケットのデザインがいきなりカッコよくて、かなりワクワク。
それに、こうした展覧会でいま時一般800円とは安い!!
さらにはこの券で同時開催の〝コレクション展〟も見られるというのですから、めちゃくちゃお得です。
(このコレクション展がまた素晴らしかったので、次回別の記事でご紹介しますね)

 

ということで、2Fの展示室へ。

 

全体の構成としては、「復活の日」「果しなき流れの果に」「日本沈没」「首都消失」などなど、小松左京の代表作をテーマにしたコーナーを中心に展開。
それぞれの作品が生まれた背景や創作秘話、作品に込められた思いなどが紹介された大型パネルを背景に、創作メモや原稿、校正紙などの貴重な資料が多数展示されていました。

 

そしてその合間に彼の経歴や交友関係などを紹介する展示があったのですが、
中でも特に興味深かったのは、純文学作家の中で小松左京を評価していたのは開高健と北杜夫だけだったという話。
当時は「純文学こそが真っ当な文学だ」という価値観全盛の時代で、SFやミステリーに対する評価は今よりずっと低かったですからね。。。
でもだからなのか、彼はこんな言葉を残しています。

 

宇宙にとって知性とは何なのか。
そしてその知性が虜になる「文学」とは何なのか。

 

SFって、ストーリーテラーとしての文才に加え、深い科学的知識がなければ絶対に書けない特殊なジャンルですよね。
決して純文学の価値を否定するわけではありませんが、たとえば明治の文豪たちの「名作」を、自堕落な私生活を連綿と綴った告白本的作品、という見方で評するならば、片やSF小説は知恵と知識と技術の集大成、総合文学としてもっともっと高く評価されてしかるべき崇高な文学なのではないか、とボクは思います。

 

でも、確かにボクの子どもの頃なんかは親や教師に勧められるのは純文学ばかりで、SF小説なんて読書と認めてもらえないような風潮は確かにありましたね…。

 

こちらは、フロアの中ほどにあった撮影OKの展示。
小松左京の書斎にあったデスクです。
ゆったりとした曲線が特長的なデザインで、ものすごく使いやすそう。
きっと特注なんでしょうね。

 

また、最後のブースにはこんな撮影OKの展示も。

 

実は左京先生、こんな本を出すほどの愛猫家としても知られているんですよ。

ところで、上記の猫部屋の横に飾られていたこの写真、ボクの中の「小松左京のイメージ」そのものなんですが…


「世田谷文学館ニュースNo.72」の表紙に使われたこちらの絵がスゴイ。
何だか別人のように渋くてダンディーですよね。
これは、2008年に「小松左京マガジン」第29巻の表紙になった生賴範義作の肖像画です。
一般に知られるやさしく朗らかなイメージとはぜんぜん違う雰囲気ですが、これはこれでとってもカッコいい!
まさに巨匠の名にふさわしい1枚ではないでしょうか。


ということで、ここらで全体を通してのボクの感想を少々。

 

昭和6年生まれの小松左京は、子どもの頃に第二次世界大戦を経験しています。
このことは、我々「戦争を知らない子供たち」世代とは大きく一線を画す体験で、彼の創作の根底には常にそれがありました。
そして、「もし、あの戦争がなかったら、僕はSF作家にはなっていなかった」という言葉通り、彼は「あんなことは二度と起こってはいけない」という強い思い、また、商業主義に乗っ取られた科学技術が、本来あるべき方向とは真逆に作用することへの憂慮や危惧を、その作品を通じて世に訴え続けました。

 

つまり小松左京は、 SF小説という表現において、「ヒストリカルイフ」という技法を使って「歴史に学ぶ」ことの重要性をボクたちに教えてくれたのです。
「日本沈没」しかり、「復活の日」しかり、「首都消失」しかり。
現実の歴史をテーマに、「もし○○でなかったら」という異世界、パラレルワールドを舞台にした壮大な物語を紡ぐことで、同じ過ちを繰り返しがちな人類の未来に常に警鐘を鳴らし続けたのだと思います。

 

また一方で、人類の秘めたる無限の可能性や、果てしない宇宙への憧憬も、彼の作品の重要なファクターです。

 

「SFとは文学の中の文学である。そして、SFとは希望である」(小松左京『SF魂』)

 

そう、彼の作品には必ず「こうならないためにはこうすればいい」という「希望」が込められています。
そしてそれこそが、ボクたち人類が進むべき道を的確に指し示してくれる確かな道標なのではないでしょうか。

 

小松左京。
実に、凄い作家でした。
そして幸いなことに、彼の残してくれた膨大な作品群を、ボクたちはいつでも手軽に読むことができます。
少しでも興味を持たれた方は、ご一読を。

 

ちなみに、ボクの極個人的なベスト3を挙げるとすれば…

といったところですが、【世田谷文学館】のミュージアムショップでもたくさんの著書が販売されていましたので、会期中に行かれる方はぜひ手に取ってみてください。

 

さて、大満足の〝小松左京展―D計画―〟は、12月22日(土)まで開催されています。
皆さんもぜひ足を運んでみてくださいね。
オススメです!!

 

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